【雑感】凄腕営業マンとメモと記憶

by Kazumoto on 10/23/2011
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とある凄腕営業マンの話を。

私が営業職だった時のノートを読み返していて、ハタとこの凄腕営業マンから教えてもらった営業技術の鍛錬法が目にとまりました。読み返してみると、今はやりの風潮を考える上で、とても示唆に富む内容だと思ったので、ご紹介します。

商談の最中というのは、ノートを広げてメモを取りつつ話を聞くスタイルが一般的だと思いますが、この人は一切ノートを取らないスタイルを貫いている異色の人でした。たまにこうした一切メモを取らないスタイルの人と出会うことはありますが、この人は、一切メモを取っていないにも関わらず、お客様からいただいた宿題や商談のポイントを忘れるなんてことは一切ない。つまり、商談中に話した内容を、ほぼ全て_時候の挨拶や雑談も含め_を覚えてしまうことができる人だったのです。

商談の場でノートというのは案外曲者だというのがこの人の持論でした。理由はノート(パソコンは言うに及ばず)があると、お客様はノートにばかり意識を取られてしまう。何をメモしたのか、まずいことをメモされていないかなど、腹を割って話したいときにノートがあると、ノートが垣根になって、本音の話なんてとてもできないのだというのです。確かにノートを覗き込まれている視線を感じつつメモしていたので、これは納得できることでした。

さらに私のメモによると、「ノートに覚えさせてしまったらそこで安心してしまわないかい?学校の授業じゃないから、メモしただけじゃダメだと思うんだ」とおっしゃっておられたとあります。

とはいえ、何時間にも及ぶ商談を丸暗記するなんていう芸当は神業です。飛び交う数字をちょっと記憶し間違えたら、それが失注につながるかもしれないわけですから。ノートが垣根になるリスクの大きさはわかるものの、おいそれと真似できるものではありません。そこで、どういう鍛錬をされているのか?と聞いた時のメモが以下です。

1:ふだんの同僚や家族との会話を記憶して、あとでノートに書き付ける。可能なら録音しておいて、ノートに書いたものと付け合わせる。

2:ニュース番組を記憶して、あとでノートに書き付ける。これも録画と付け合わせる。

これをこの人は20年続けているというのです。この鍛錬を行うことによって、「自分の記憶の形」が見えてくると言います。

最初は片手でおさまる程度のキーワードを覚えておくだけで精一杯。それが10個・20個と記憶できるようになる。それができたら次に、キーワードとキーワードの間をつないでいたストーリーを引っ張り出すようにしてみる。引っ張り出す為に、相手の表情や口調、口癖、雰囲気、仕草、そういうものをトリガーとするように周辺情報として記憶できるようになった頃から、メモを取らなくても特に問題ないようになったとのことでした。

こういう努力を前時代的だと切って捨ててしまうのは危険だと思ったのです。第二の脳、記憶の外部化、脳を拡張するなどという言葉が矢鱈と目に付きます。覚えておかなくてOK!という風潮です。しかし、映画「攻殻機動隊」の外部記憶装置のように、会話中でも悟られることなく検索でき、すぐに口をついて出てくるようになれば別なのでしょうが、まだこうした域には至っていない以上、大事な事は努力して覚えておく姿勢というのは今も重要だと思います。第二の脳をいくら鍛えても、第一の脳がスカスカでは、記憶も記録も使うことができないわけですから。

第二の脳に預ける選択をするのも第一の脳なら、第二の脳から引き出すこともまた、第一の脳の役目なわけで、預けたら忘れてOKというのは、記憶力に自信がない私のようなものにとっては、とても魅力的ではありますが、やはり、ちょっと安易なのかもしれませんね。

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追記:わざわざ記憶しなくてもICレコーダーで録音すれば良いんじゃないか?という意見をいただきました。たしかにそうなのですが、ICレコーダーを出すと、私ではなくてICレコーダーに向かって話をする方が多いのです(笑)隠し録音すれば良いのでしょうが・・・それもねぇ?と思います。

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