【応援!本レビュー】効率化の先を歩む道標『IDEA HACKS!2.0』(原尻淳一・小山龍介著)

by Kazumoto on 12/7/2011
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51h24yvdBAL SL500 AA300著者、原尻淳一氏(@junichiharajiri)、小山龍介氏(@ryu2net)、並びに東洋経済新報社の関係者の皆様より献本いただきました。本当にどうもありがとうございます。

(過日、著者両名を交えた極めて少人数での意見交換の場にお誘いいただきその席上でいただきました。とても多くの学びと気づきが得られた会でした。この場をお借りして改めて御礼を申し上げます。)

今から5年前(もうそんなに前!)に書かれた前著『IDEA HACKS!』はライフハックブームの火付け役になった一冊だったと思います。前著で紹介されたハックの共通点は「仕事が楽しくなるための方法」でした。前著に紹介されているハックは未だに私が愛用している(もはや習慣化している)ものも多く、当時の私に与えた影響は少なくありません。

しかし、時代はこの5年間で随分と様変わりしています。SNSの登場、クラウドサービスの登場。3.11の東日本大震災以降、ワークスタイルにも個人の価値観にも大きな変化が現れています。大局として先行き不透明な中に『IDEA HACKS!2.0』と題したいわゆるハック本・テクニック本を出す理由というのは正直、意図を計りかねていました。「これ以上効率化を追求せよ」という本なのだろうか?もしそうなら少し違うのではないかと思ったのです。

さらに、私事として、”最近”の「ライフハック」というものがちょっと好きではありません。ライフハックという言葉は、もともと Danny O’Brien が2005年にO’reilly の会議で行った講演で提唱された言葉で、「非常に生産性の高いプログラマーのもっている習慣」として「日常に利用できるハック」という意味合いの言葉なのだそうです。

今では(日本では?)、これが「IT時代(IT業界の人)の御用達のテクニック」と混同され、「伊東家の食卓」的な豆知識まで裾野は広がり、今や何でも「便利ならハックと付ければOK」といった様相となっています。どこまでが「ライフハック」という言葉の範疇なのかということは、詳しい人たちに任せるとして、どうも気になるのは「このツールを使えば、このガジェットを使えば、このフレームワークを使えば、”苦労すること無く””楽に”上手くいきますよ」といった努力せずに楽をする方法がハックとして語られていることに違和感を覚えるのです。それはそれで楽しいことですが、もはや枝葉のことで、「個人で使って便利だった」と言えば良いのに●●ハックと付けるとPVが伸びるみたいな使われ方はどうなのかなぁ?と思っています。

もともとの意味合いから察するに、決してDanny O’Brien は「楽しよう」とは言っていないし「努力」すること無しで上手くやろう!などとは言っていないと思っています。「小さな工夫(繰り返し作業を短時間処理する等)で時間を生み出し、生産性を高めよう」ということなのです。「楽にいこうぜ!」だなんて一言も言っていません。努力無しに上手くやる方法?・・・私の考え方が古いのでしょうが、私にはどうもピンとこないのです。無駄な仕事を効率的に多くこなしたところで意味が無いとも思っています。そんな個人的な事情もあり、実は本書も”最近”のライフハックを意識したモノなのだったら嫌だなと邪推、もしくは斜に構えていました。

ところが、本書を読み始めていきなり先制パンチを食らいます。


効率的に仕事をすればするほど、その人の仕事は貧しくなっていきます。できるだけ苦労をせずに、効率よく人生を歩んできた人の表情が、どこか貧相になっていくのと同じです。


今までのハック1.0は、方法を取り扱ってきました。それは一歩間違えるとスキル至上主義になりかねないものをはらんでいたことは、ここで認めたいと思います。



いきなり前著の及ぼした影響、誤解されて広まった部分があったこと。効率化の副作用があったであろうことを潔ぎよく認める書き出しから始まるのです。

ハック本ですから、こういう製品を使うと便利だとか、こういう工夫をしておけば習慣化するのが楽になるという前著のスタイルを踏襲したものもいくつかあります。しかし、そういったものも「私が便利」だから進めるわけではなく、「私が便利になった先にどう変わったのか」を見据えて言及している点が、前著との最大の違いです。

その意味で、前著のように明日からでも簡単に始められて、数日で成果を体感できるようなハックの数(財布に紙を忍ばせるとか)はとても少ないと言えます。本書を読んだ翌日からアイデアがジャブジャブ出てくるなんてことはありませんし、最新ツールを更に”効率よく”使う方法でもないし、ありがちなテクニック偏重型のハウツー本でもありません。

本書の主題はハックらしからぬディープで精神的なものです。「少し楽しく仕事をする方法」から、「シェアの時代において豊かな生活をする考え方(=IDEA)」へと変化しているのですから。単なる方法論では無くて、豊かさとは何かというとても漠としたものに対する考え方の工夫を扱っています。

その結論は京セラの稲盛和夫氏の思想哲学と酷似しているように感じます。つまり「忘己利他」という言葉です。稲盛氏は「利他の心」とだけおっしゃっておられますが、これは天台宗の伝教大師最澄がおっしゃった「己(おのれ)を忘(わす)れて他(た)を利(り)するは慈悲(じひ)の極(きわ)みなり」が元の言葉です。自分のことは後にして、まず人に喜んでいただくことをする、それは仏さまの行いで、そこに幸せがあるのだという意味です。

情報のアウトプットも、「これはオレの情報だから誰にも渡さない!」ではなくて、「あの人の役に立ちそうだ」とか「これは同僚のAさんの役に立つ」さらには「社会・会社の役に立てる」といった感じに、シェアすることでパブリックに出し、より有効にという発想に変わってきています。

卑近な例で言えば、Twitterで有益と思われる情報をRTしたり、Facenookでイイネ!やシェアボタンを押したり、Google+で+1ボタンを押したりすることは、自分がイイネと思った情報を「誰かにも届けたい」と思ってする行為ですし、ブログを書くことだって、自己顕示欲というよりは、価値観なり、自分がやっている工夫の過程、自分が陥ったトラブル解決法などが誰かの役に立てばイイナと思って書いている人が多くなってきています。これは「利他の行為」と言い換えても良いアウトプットではないでしょうか。

また、私たちは様々な場に多かれ少なかれ束縛を受けています。会社、組織、地域、そして自分の固定概念。これらの場を超えるにはどういう考え方が必要か。企業に属しながらも個人として社会に貢献するという方法はないか?一昔前には考えられなかったことですが、今や個人がTwitter、Facebook、Youtube、Ustreamなどなどを使うことで、
多くの人に情報を伝えられる時代です。こういうものを駆使して、誰でも突出した個人になることができる可能性がある時代であることにも言及されています。

「誰かに与えることが大事」と決して上から目線でお説教をしているのではなく、全て著者が実地にフィールドを歩き体験し実践し、その上で数年先を見据えて今必要な「考え方=生きる知恵=アイデア」を考えるヒントを与えてくれているというところもポイントです。

単なる「仕事に役立つアイデア出しの方法」ではありません。世の中にどうお裾分けをするか、他者に社会にどう貢献していくか、その積み重ねが「豊かさ」になる。「経済的に豊か」につながる可能性もあります。しかし、与えることが先。経済的には後のこと。まさに「先義後利」の発想です。

『IDEA HACKS!2.0』というタイトル、3回くらい読むと本書でいうアイデアという言葉は思い浮かぶアイデアより広義なものなのだと納得がいくのですが、個人的には『LifeStyle Hacks!』でも良かったのではないかと思うくらいです。

ライフスタイル(ワークスタイルも)を豊かなものにしたい、でも自分一人が成功したって意味が無い。世の中に個人レベルで貢献したい。少しでも良い世界にするために献身したい、と願う新しい価値観を模索している人には、きっと多くの気づきが得られるでしょう。

どうにもボンヤリとしている未来に不安を感じ、行動できずにいる人は、本書を読むことで、少しフォーカスを合わすキッカケを得られるのではないかと思います。

できれば前著と合わせて2冊一気に読むことをオススメします。

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