【本レビュー】『理系のためのクラウド知的生産術』(堀正岳著)

by Kazumoto on 01/27/2012
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51ux85ic62L SS400ご存じ Lifehacking.jp を主宰されている堀正岳さんの著書。私の記憶が確かならば、私の座右の書のひとつである『情報ダイエット仕事術』以来の単著なはず!

堀さんの本業は「科学者」だとは以前から存じ上げていましたが、実は・・・結構疑いの眼で見ていました(笑)だって、そう思いませんか!?

科学者って言ったら、毎日毎日、国内海外問わず、ものすごい量の論文を読み込んで、膨大なデータの中から自分の論に対して使えるモノ、つかえないモノを精査したり、フィールドワークに行ったりして肉付けして、自分の論文を書き、学術誌とかに載せちゃって、さらには学会とかでもプレゼンしちゃったりする人たち・・・ですよね?そんなクソ忙しい立場の人があれだけのクオリティのブログを書いていて、さらに共著とは言え、年間数冊の本を出版し、さらにはイベントを開催したり、Evernoteの発表を聞きに渡米してたりするなんて・・・ありえないことですよ。しかも一児の父という顔もあるわけですから!!

この疑問を一気に払拭するにはひとつしかないわけです。「科学者」というのはガセなんじゃないかと決め込むことです(笑)しかし、本書を読むと、本当に科学者なんだなという事実がハッキリわかります(何しろあのブルーバックスから刊行されている・・・)。ご本人は決して認められないでしょうが、やっぱりスゴイ人です。そしてそのスゴサは、ある目的のために小さい工夫をあちこちに施すことで、成り立っているんだなということが、本書を読むと良くわかります。

私はガチ文系ですし、お客様である大学や研究機関の方の研究室を訪れる程度しかアカデミックな方々_特に理系の方々_との面識はありませんが、どのお客様も「予算の確保と消化(政治力がものを言う世界のようです)」だとか「事務手続き書類が面倒」とか、「あれ?判子はどこだ?」とかやっていらっしゃる姿に何回も遭遇しています。(請求書を無くされる方が多いのは何故なんでしょうね・・・?)

職場で良く見る、経費精算書類でトラブっている人、角印を押すところに丸印を押してしまって焦っている人、ファイリングすべきものを後回しにして、書類の山から引っ張り出そうと格闘している人、1通のメールを探し出すのに苦労している人、こういう人たちと何ら変わりはないように思います。研究者さんもやっていることはサラリーマンとあんまり変わらないんだなぁという印象を持っています。(派閥みたいのもあるらしいですし、そんなところも同じですね)

研究者の場合は「研究をし論文にまとめて発表する」のが仕事だというだけで、その背後は文系・理系問わず効率的とは言いがたい事務作業に忙殺されてしまっているわけです。私のようなサラリーマンがこうした事務作業や社内資料、社内政治に時間を取られて、プロジェクトが前に進まないのと酷似しています。

本書ではクラウド_具体的にはGmail、Dropbox、Evernote、GoogleDocs、Skype、メンデレイなど_を活用し、「研究の時間を捻出すること」を目的としています。決してマニアックな使い方、あっと驚くテクニックではなく、ごく一般的な機能だけでです。そして何故これらを使うのか、とてもとても具体的に書かれています。

「メールを探す時間を短縮できたら、管理の手間を減らせたら」
「自宅のPCでも研究所のPCでも同じファイルを扱えたら」
「膨大な論文から必要な論文だけをピックアップするためには」
「思いついたアイデアを取り逃さないためには」
「共同執筆の書き方、学生指導はこう変えられる」
「SkypeやSNSを使って物理的な距離はあってもミーティングは開ける」
などなど、

紹介されているクラウドサービス、ツール、アプリ、テクニックは「研究のための時間を捻出する」という目的を実現するために使った方が良いという主張が一貫しています。

「理系のための」となっていますが、これは「知的労働者のための」と置き換えることが十分に可能です。十分な時間の自由が確保できなければ才能を信じて行動することもできないのだと著者は言います。時間が無いと嘆いている時間も大切な時間です。確保した時間で『何がしたいのか?』というアウトカムをはっきりさせたなら,行動有るのみなのです。

私は、堀さんの研究者としての業績は存じ上げません。しかし、専門分野のことに関して素人丸出しの質問をしたことがあります。その瞬間、堀さんの目は研究者のそれに切り替わり、問題の根本原因、今起こっていること、読んでおくべき本、こういう研究がどういう役に立つのか等を熱っぽく教えていただきました。

その道に精通した人とは、専門知識をわかりやすく素人に伝えることができる人です。まさにその時の堀さんの話は、専門知識を細かく細かくかみ砕き、少しでも私が理解できるように、私の理解を図りながら、理路整然と教えてくださいました。この一事を持って、きっと堀さんは研究者としても一流の方なのだろうと私は信じています。(あれほど楽しい授業を受けていたら・・・きっと理系の分野も好きになっていただろうとさえ思えるくらいでした)

何のためのライフハックなのか?その答えのひとつが本書に書かれています。ライフハックのためのライフハックを見つけることを楽しんでしまうあまり、時間を生み出すどころか、時間も成果も生み出していない人(私も含め)は是非、何度も読み返すことをオススメします。

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